パラリンピックイヤー(25-26)活動記録
いよいよ2026ミラノ・コルティナ冬季パラリンピックの年。
途中、何度も活動中止の危機をむかえて心が折れそうになっても、男子チームの先輩選手や昔から幸平を知ってくれている方に助けられ、なんとかこのスタート位置にたどり着けた。
その心に報いるためにもパラリンピック代表に選ばれなければ!!

2025年スロベニア・マリボルの世界選手権で、アメリカのパトリック ハルグレン選手との1枚。
ハルグレン選手はパラアルペンスキー界で一番陽気。ゴールした後、何位だろうがゴールエリアで吼える吼える、喜びを爆発させる。日本人選手はうつむいて首を傾げたりするけど、幸平にはそれは止めろと言っていて、最近ガッツポーズをするようになってきた。世界戦に立てるということは、それだけ多くの人に送り出してもらっていることだから、感謝のためにも下なんか向いちゃいけない、と思う。
そんな陽気なハルグレン選手も、亡くなったお兄さんとの約束を実現するために金メダルを目指している。パラ選手はそれぞれ背負うものを背負って戦っており、ハルグレン選手も例外ではない。
それにしても海外ナショナルチームのホームページは充実している。その選手の人となり、人生をきちんと解説し、プロが撮ったきちんとした写真を使ったホームページを公開している。強い国はそんなところもぬかり無い。
1 行政からの応援
幸平はアスリート雇用で東京都の会社に雇っていただき、千葉県松戸市に住んでいます。
このほど、「千葉県パラアスリート強化指定選手」「東京ゆかりパラアスリート」に指定・認定していただきました。
本当に思いもよらぬ指定だったので、心の底から嬉しかったです。


2 チリ夏合宿
【何故にチリ?】 アルペンスキーはヨーロッパが本場で、あちらのスキー場の雪面は基本的に氷でできています。いわばスケートリンクの上で滑るようなもの。柔らかい雪で技術を覚えた日本人はその違いが大きな壁となります。つまり、練習は日本ではなくてヨーロッパで行わなければいけないということです。そのため、多くの日本人選手がヨーロッパで合宿を組むし、本場ヨーロッパの選手も集まるわけですが、いくら氷河といっても北半球は今は夏。ワールドカップのナショナルチームのようなトップ選手が合宿を組むのは実はチリなのです。
ただ、地球の反対側にあるチリはとんでもなく遠い。普段の年であればチリで合宿を組むなんてあり得ないのですが、今年はパラリンピックイヤー。特別な年です。高額な経費を理由に参加せずに後悔するよりは、意を決してチリで練習することとしました。お世話になるのは健常者のレーシングチームのTeam Go Anywhere 幸平と同じ若い健常の選手がそれぞれの人生をかけて集う合宿です。



【羽田出発】 さあ、出発だ!今回はスキーケース2個にコンテナ2個。本当はもう1個持っていきたいんだろうけど、荷物に超過料金がかかり、それは2万3万の話じゃないから減らしたんだろう。しばらく前から幸平は旅行代理店を通さず、自分で調べて直でチケットを買うようになった。トラブルがあった時に相談相手がいないのが不安だけど、代理店に支払う手数料も節約しないといけない位に彼は困窮している。
日本からチリに直行便は無く、アメリカで乗り換えます。7月31日に羽田を立ち、ロスアンジェルス国際空港まで約10時間のフライト。乗るのはアメリカン航空のBoeing 787-8 Dreamliner 。ヨーロッパに行くときは北極圏航路の北のほうに飛んでいくけど、今回は太平洋に向かってGo!!


【チリに行くぞ!】ロスで4時間ほどのトランジット。次はラタム航空の Boeing 787-8 Dreamliner にのってチリのサンチャゴまで。
ラタム航空は南米(ラテンアメリカ)の各都市を結ぶ航空会社で、日本にいるとあまり馴染みがない。
技術の進歩に関心するばかりだが、Flight radare24 や Flight aware というアプリを見れば、リアルタイムで幸平の乗った飛行機がどこを飛んでいるか、高度や速度などの情報とともに確認できる。
無事に出発したことを確認してと安心。でも、少したってからまたアプリを見ると、幸平の乗った飛行機がUターンし、高度も徐々に下がっている。そのうち海上に出てぐるぐる回りはじめた。不安で胸の鼓動が高まる。早く空港にたどり着いてくれとご先祖様にお祈りする。
【その時機内では】結論から言えば、無事ロスアンジェルス空港に戻りました。その時の機内の様子がこれ。緊急着陸に向けて燃料を捨てている様子(満タンだと着陸距離がのびて滑走路オーバーするかもだし、万一火がついたら大爆発しちゃう)。海上でぐるぐる回っていたのは燃料を捨てていたからでした。原因は電気系トラブルのため引き返したそうだけど。言葉の通じないなかでこんなのみせられちゃあ、そりゃ不安だわな。
問題はこのあと。すぐには再出発の便は用意できず、一晩ロスに待機となった。旅に不慣れな私なんかだと、足止めくらった全員をバスでホテルまで送迎してもらわないと手も足もでないが、幸平に渡されたのはスペイン語の1枚の紙きれ。かろうじて翌日の出発時間と便名は英語で書きこんでもらったらしいが、手配してもらったホテルまではそれぞれで、とのこと。後日、どうやってホテルまで行ったの?と聞いたら、「ウーバータクシー」。ウーバータクシーって何だ???


【チリに到着】後になってみれば笑い話になるけど、冷静に考えれば結構なトラブルを乗り越えて、2日近く遅れてチリに到着しました。今回もアパートを借りて選手同士で共同生活。左の写真は宿舎から見た外の風景です。当たり前ではあるけど、連日酷暑に耐えている日本からすると別世界。


【地球の反対側】合宿地はサンティアゴの東方のロ・バルネチェアという所。住所を入力すると、ストリートビューが見られた!パソコン上とはいえ、地球の反対側を散歩できるなんて感動!写真は舗装路だけど、少し移動すると昔の岩手みたいな砂利道が多い。なんだか親近感を感じる。

【練習開始】いよいよ練習開始!見たところ、安比高原の白樺ゲレンデくらいの緩斜面みたい。以下QAです。
Q 雪面の状況は?
A 固くてグリップする雪だよ!
Q コースは?
A 狭い部分もあれば広い部分もあって、今は広くて緩斜面で練習しています。
Q リフトは?
A ICチケット乗車制。リフトとTバーの両方あるけど、リフトメインで練習している。
Q 昼食はゲレンデレストランで食べてるの?
A 合宿所に戻り、コーチに作ってもらって食べている。
【スキー基礎練習】幸平は右半身マヒなので、右足をうまく動かせない。普通に考えれば、左ターン(右足外足)が苦手で、右ターン(左足外足)が得意のはずだが、逆で、右ターンが苦手。聞いてみると、体を内側に倒せないのだそう。
私は、とにかく会う人会う人に何故そうなるのか聞いてみるのだけど、答えることのできた人に会ったことが無い。一般的にはその位不思議。レースシーンを見ていると、倒せないままゲートに近づいて、直前でポンと外足を置きにいってしまう。もっと早くにエッジをとらえることができればいいのだけれど。
多分、この動画は、コーチがその是正を図ってくれているところ。どんな時でもこの位きれいにターンを仕上げることができればいいね。それにしても、これはコーチの方がかなり難しいことをやってくれている。素晴らしい腕だ。




【チリの食事】練習が無い日は、たまにはみんなで外食に出かけているらしいです。彼は根っからの和食党。なので、ヨーロッパ遠征中の食事はそんなにお気に入りではないけど、チリの食事は最高に美味しいと言っています。チリは広く海に接しているため新鮮な海産物が採れ、魚料理好きの彼にとってはこんなに食べ物の美味しい国はない、ということらしい。
左上から、エビカレー、魚定食、エビフライ、??。私(筆者)はエビが大好きで、エビカレーとエビフライ食べてみたい。
【スキー基礎練習ショートポール】先日動画をアップした、コーチに支えられてのターン構成を、今度はショートポールで確認しているところ。アルペンスキーの旗門(ポールとかゲートとか言う)は背丈より高い太さ3cm位のプラスチックの棒です。スキーはターンの内側に体を傾けて曲がるのですが、そこに旗門があり、まともに行けば旗門にぶち当たり、痛いこと痛いこと。心理的には旗門はこわいものと心に刷り込まれます。で、その心理的圧迫を取り払って練習するのが、この短いポールを用いたショートポール練習。うまくできていますね。もっともっと雪面と対話しながら練習を積み重ねていってほしいです。




【世界遺産バルパライソ】バルパライソはスペイン語で「天国の谷」。太平洋に面した急な斜面に広がるカラフルな街並みが特徴で「バルパライソの海港都市とその歴史的な街並み」としてユネスコ世界遺産に登録されているそうです。ヨーロッパを中心に世界各地から移民を引き入れた歴史を背景に、ストリートアートでカラフルに彩られた家々が青空美術館として環境客の目を引いているそうです。送られてきた写真は家々のアップですが、観光パンフレットだと海に面した急斜面に、密集したカラフルな街並みというのが採用されているらしいです。プロだと引きで撮れる撮影ポイントからの写真を使うのでしょう。1枚目の写真がいくらか雰囲気を伝えているのかな?

【チリワイン】チリの有名なワイナリーも見学させてもらえたそうです。チリは、地中海性気候、アンデス山脈の雪解け水、長い日照時間などによりブドウ栽培に適しており、安価で品質の良いワインが作られることで有名だそう。お酒を飲まない彼にとっては猫に小判だったかもしれないけど、良いものを見学させてもらえたみたい。
【チリ合宿、スラローム練習の成果】1か月に及ぶチリ合宿もいよいよお終い。合宿前にスラロームの右手の使い方に文句を言ったことがあり、それに対して彼は何も言い返さずにその時は終わったのだけど、内心は見てから言えよ、という気持ちだったのかも。右手のブロックの構える意識が強すぎて体の流れが途切れることを指摘したのだけど、どうでしょう?ワンパターンに陥ることなく、うまく流れをつなげている気がするのですが。


【紫波町立西の杜小学校で講演をさせていただきました(9月11日(木)】チリから帰ってきた幸平は、すぐに岩手に帰ってきて、紫波町立西の杜小学校のPTA教育講演会で講演させていただきました。実は県内の全ての小学校に講演をさせていただきたい旨連絡をとったのですが、応じていただいたのは2校だけでした。これは応じてくれなかったと恨み節を書いているのではありません。小学校も公の機関であり、なにかやるにしても予算化されていなければならず、年度途中に講演したいと言われても受けられるはずがないというのが常識。にも関わらず招いていただけたのは、私達の知らない方の、幸平を応援してあげたいという意思が働いたであろうことは想像に難くありません。本当に有難い。感謝の心を忘れないようにしなければなりません。

【株式会社十文字チキンカンパニー様に御支援していただきました】まだ令和の米騒動がおこる前のこと。「お父さん食べるものが無いので何か送ってくれませんか?」とSOSの電話が。幸平は有難いことに東京の会社にアスリート雇用していただき、スキーの練習をできる環境に置かせてもらっているのですが、スキーは他と比べて高額な経費を要するスポーツで、生活費としていただくお給料もスキーに廻さないと活動を維持していけない状況にあります。そのため、パーソナルスポンサーを募らないとならず、この2年間、あらゆる伝手を使い、また、直接お願いをするも、とにかく全敗。私も手伝いましたが、きちんとお断りの対応をしてくれる会社はむしろ有難く、返事が無いのは当たり前、会うと言っておきながらうやむやに終わらせようとしたり、支援すると回答しておきながらフェードアウトしようとする会社ばっかりで・・・・
そのような困っている幸平に、この度手を差しのべてくれたのが、株式会社十文字チキンカンパニー様。岩手は養鶏羽数全国ベスト3の県で、養鶏が盛んです。特に県北部と県南部に五つほどの会社があり、十文字チキンカンパニー様はそのトップ企業の一つです。これらの地方の道の駅などにいくと唐揚げが売られているのですが、それは養鶏地域の本場だから。
鶏肉は脂肪が少なく良質なタンパク質を多く含む食品で、アスリートの必需食品です。御支援の内容は鶏肉〇kgの提供ということで、良質な鶏肉をパワーに変えて体作りに励み、ミラノ・コルティナパラリンピックを目指していきます。ご支援いただき、大変ありがとうございます。

【小岩井農場に行ってきました】学校講演、会社訪問を終え、すぐに松戸に戻って欧州遠征の準備をしないといけないのだけれど、1日だけ矢巾にいられるとのこと。どこに連れていこうかと考え、家から30分ほどの小岩井農場へ家族で行くことにしました。幸平は盛岡農業高校の動物科学科出身で酪農に詳しい。色々と説明してくれて、半分も理解できなかったけど、喜んでくれてよかった。親が言うのもいかがなものかという気がしないでもないが、幸平は心根の優しい子で、動物にもそれが分かるのか、小さいころから動物との垣根が低く、すぐに仲良くなる。小岩井にはお馬さんもいて、何か話して仲良くなっていた(そう見えるだけ?)。何にせよ束の間の休息を楽しんでもらえてよかったです。


【欧州合宿に出発】ジャパンチームの欧州合宿に参加させてもらえることになりました。チームの海外合宿に参加させてもらえるのは実に何年ぶりだろう? 今回は成田から。航空機は定番のスイス航空。良い航空会社だと思います。
出発前写真の荷物に黄色のものが見えますが、これブーツです。幸平に聞いたわけではないのですが、多分お金が足りなかったのだろうなと推測します。というのも、普通、預け荷物は23kgの荷物が2個までで、それを超える個数の荷物は高額な超過料金がとられます。よく聞く笑い話として、高校生くらいの若い選手が海外遠征する時、思いブーツを荷物に入れると23kgを超えてしまうので、機内手荷物として持ち込む作戦をとることが少なくないのだとか。幸平も同じ作戦だったのだろうか?とにかく活動費の工面に困っていて年中金欠です(今回の合宿も費用は自己負担)。
図の説明
図の説明
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